うちの会社の労働者の代表者って誰?
- 2016年4月13日 水曜日

こんにちは。社労士の志戸岡です。
志戸岡が就業規則を作成するときに、以前よりも気にするようになったことがあります。
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それは、
「労働者(社員)の誰が労働者の代表者なのか?」を社員に認知させることです。
この労働者の代表者(正確には、過半数代表者)は社員の過半数以上が加入する労働組合があれば、組合の代表者がそのまま労働者の代表者になります。この場合は明確です。
しかし、ほとんどの中小企業の場合、自社には労働組合がありません。
なので、中小企業の場合、別途誰が代表者になるかを決めなければいけません。
そもそも、労働者代表者は何をする人なのか?
基本事項からいきます。
そもそもなんで労働者の代表者を決める必要があるのか?
これは、就業規則を作成したり、改定したりすると、「労働者の代表者より意見を聴くこと」が法律で義務付けられているためです。
他にも、残業の限度時間を決める36協定や色んな社員との取り決めを書面にする「労使協定」を作成するたびに、この社員代表者は登場します。
わかりやすくいえば、労働者代表者の役割とは、会社(経営側)との交渉の窓口担当者です。
社員の立場から社員の意見を吸い上げて経営側へ伝えたり、社員の意見をまとめたり、かなり重要な役目をもっています。
よって、就業規則の作成や改定をする時にも、誰が労働者の代表者であるのか?を代表者本人を含め、社員が認知しているのかは社員自身に当事者意識を持たせるという点で非常に重要です。
労働者の代表者の決め方は?誰でもなれるのか?
代表者の決め方は特に定めはありません。
投票や会議での挙手の他に、話し合いや持ち回り決議などでもOKですが、労働者の過半数がその人の選任を支持していることが明確である民主的な手続きがとられていることが必要です。
また、何のための手続き、協定を結ぶ過半数代表者を選出するのかを明らかにしたうえで選出する必要があります。
決め方で一番楽なのは話し合いで決めることでしょうか。
なので、会社の社長が特定の労働者を指名するなど、使用者の意向によって決めていたりするとアウトです。
この場合、選出方法が法的な要件を満たしていないとされ、就業規則や協定書の効力自体がNG(無効)になることになるため注意が必要です。
次に、誰でも代表者になれるのかというとなれません。
残業代の支払い対象とならない、俗に言う「管理監督者」はこの労働者代表者になれません。
※管理監督者とは、一般的には部長、工場長など、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある人を指します。
また、労働者代表者は事業所ごとに選出する必要があります。このあたり、他店舗展開する事業は意外と面倒です。
なぜ以前よりも気にするようになってきたか?
就業規則を作成したときのことを考えてみます。
この場合の実効性のある手順としては、以下
1、経営側が改定案・改革案を作成
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2、社員側へ説明する
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3、社員代表者は、他の社員の意見集約、質疑事項などをまとめて経営側へ返答、協議
※場合によっては1~3を繰り返して合意形成を図る。
さて、では、ここで中小企業が陥りがちなパターンを推測してみます。
1)労働者代表者の選出がなあなあになって、代表者の当事者意識が低くとりあえず言われるがまま書類にサインしている
2)1に関連し、当事者意識が低いと、社員間での意思統一、意見集約が為されないまま制度が変わる
3)2の説明が不十分でよくわからないまま制度が変わってしまっている
4)会社が代表者を指名していると、社員代表者しか改定内容を知らない
こうなると、どうなるか?
制度の大きな改定をすると、「そんなの聞いてません」という人がでてきます。
こういった人を出さないためにも、同じ社員の立場である労働者の代表者が経営側の趣旨を理解した上で、社員の意見集約を行うことは非常に重要です。
そのためにも、前提条件となる誰が【労働者の代表者】であるかを代表者本人にも、周囲の人にも認知させる必要があるという結論に至ります。
正直にいうと、以前はどんな規程の内容を作ればベストか?という点に主にフォーカスを当てていました。
しかし、どんなに表現が良い規則を作っても、社員が内容を知らないのではあまり意味がありません。
「良い就業規則」って、表現が法的に問題ない規則ではないですよね。
その職場(会社)の雰囲気が良くなったり、社員のモラルやモチベーションが上がったり、良い方向に向かったりするのが良い規則のはずです。
結局どんな規則を作るかよりも、どんな運用をするかの方が重要なのです。
就業規則一つとっても、今までやっていた「点」での仕事がやっと「線」になってきたような気がします。
せっかく作るなら、最大の成果を出したいですからね。
奥が深いです。
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