パワハラは非常に線引きが曖昧だという判例の検証

  • 2021年7月29日 木曜日

こんにちは。社労士の志戸岡です。

先日、お客様から判例に関する質問を受けました。

せっかくですので、今日はこの質問のあった判例と検証内容をご紹介させて頂きます。

判例の事案概要

質問のあった判例は、建設会社で起こったパワハラ絡みの労災、自殺事案です。

事案の概要は、営業所長がノルマの未達を隠そうと不正経理をしてしまい、そのことも絡み、上司から叱責を受け、数日後に自殺。

遺族側が損害賠償請求を起こし、地方裁判所の1審では遺族側の請求が一部認容という結果。

一方、高等裁判所の2審では全く逆で、遺族側の請求は棄却。

お客様が気になったのは、1審と2審で大きな逆転が起きた理由や分析がしたいという趣旨で、非常に勉強熱心な経営者様です。

論点と情報の整理

以下、私が見たところの論点と情報整理です。

〇主な論点

・過剰なノルマはあったのか?

・不正経理は誰のせいか?

・上司からの叱責はパワハラなのか?

〇情報整理

・労災認定については、本件については既に労災認定が確定となっており、争点とはなっておりません。

・本件で争われたポイントは、民事上の損害賠償請求となり、遺族側の訴求根拠は民法の不法行為と労働契約法の安全配慮義務違反となります。

地裁と高裁で真逆の判決となった理由(考察)

判例を考察したところ、ポイントは本人の「過失」と「会社側の実施していた対応策」と判断しました。

地裁判決では当事者であった営業所長の過失は「6割を下らない(最低でも6割)」と指摘しています。

一方、高裁判決ではこの本人の過失をより重くみたことと、会社側も対応策を実施していたことで、「仕事が原因の労災ではあるものの、パワハラではなく会社にも責任はない」という判断がなされたと考えます。

〇本人の過失が認められたポイント

・出発点となる過剰なノルマ

→売上計画自体を本人が作成していました。
また、作成した内容について会社は特に計画を増額する要請はしていません。
そのため、過剰なノルマとはいえないと判断されています。

・不正経理

→本件の営業所長の前任者まではそのような不正経理はしておらず、
自身で立てた計画・目標を達成することができないために、自身が不正経理に手を染めてしまいました。
また、上司から不正の是正を指示されたものの、改善しませんでした。

・上司からの叱責

→不正経理を解消するために、ある程度厳しい改善の指導をすることは上司として正当な業務の範囲内といえます。よってパワハラには当たらないと判断されています。

○上記以外で遺族側の主張根拠とその主張に対する会社側の実施していた対応策

・長時間労働だった

→実態として死亡直前6ヶ月の残業時間の推計が50~80時間となっており、著しく長時間労働とはいえないと判断されています。

・有能な人材が不足し人材配置の支援が欠如していた

→要員補強を会社に要請した事実がありませんでした。
→逆に、営業所の利益をだすため(人件費を削減するため)に営業所の所員の人事異動を自殺した営業所長の同意のもとで実施していました。

・メンタルヘルス対策が欠如していた

→会社はメンタルヘルス対策の研修を実施しており、自殺した営業所長も研修を受講していました。

以上のように、会社側も何もやっていなかったわけではないということで、会社側の落ち度はなく、仕事が原因ではあるが(労災は認定)、労災以上の損害賠償は認められなかった、という結論となっています。

【本人過失、自己責任となってしまった要因まとめ】
・売上計画を自分自身で立てていたこと
・自分が不正経理に手を染めてしまった
・不正経理の改善も行なわなかった
・遠方の自宅を自身で購入したことで通勤時間が長時間となった

労災については、労働者を保護することが目的のため、認定となっていますが、民事上の損害賠償の認定の基準は本人の過失がどれだけあるかもポイントになる、という事例です。

やはり、パワハラは実際の裁判においても認定、不認定が見る人によってかわり線引きが難しいことがわかります。

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