育休の制度説明と意向確認の義務化(育児介護休業法の改正ポイントその2)
- 2021年10月20日 水曜日

こんにちは。社労士の志戸岡です。
育児介護休業法の法改正の解説、2回目です。
本日は、来年4月以降に、企業の人事担当者として対応が迫られる内容です。
実務上は結構重要だと感じております。
それでは内容をみていきましょう。
来年2022年4月1日より、全ての企業に対し、育児休業に関連し新たに次の義務が課されることになります。
【1】新制度及び現行育児休業を取得しやすい雇用環境の整備
【2】労働者に対する新制度及び現行育児休業制度の個別周知・意向確認
【1】新制度及び現行育児休業を取得しやすい雇用環境の整備
まずは【1】についてです。
これは、具体的な内容としては、次の選択肢からいずれかを選択することになります。
選択肢の全ての措置が義務付けられる訳ではなく、あくまでも自社の状況に合わせて、実施する措置を選択することになる予定です。
(1)育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
(2)育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口設置)
(3)自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
(4)自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
中小企業として一番負担も少なく現実的なものは、ハラスメント等の相談窓口担当者に上記(2)の育休絡みの相談担当についても兼務してもらうことでしょうか。
他、(4)の方針を周知することも考えられますが、方針だけ周知するのもあまり実効性を伴わないケースもあり、微妙な気がします。
【2】労働者に対する新制度及び現行育児休業制度の個別周知・意向確認
企業として大変なのが、実は【2】の個別の周知・意向確認です。
これは、労働者又は配偶者が妊娠又は出産したこと等の申出をしたときに、まずは該当の労働者に対し、新制度及び現行育児休業制度等を周知します。
さらに、これらの制度を取得するかどうかの意向を確認することが必要になります。※周知の方法は、面談、書面交付、FAX、電子メール等のいずれかにより行います。
今まで、出産や育児のタイミングにある女性社員に対しては産前産後休業や育児休業の取得を促す取り組みをしてきていたかと思います。
一方、配偶者が出産を迎える男性社員に対しては、育児休業についてどのような制度があり利用できるのか、また、子の出生直後からの働き方をどうするのかについて会社側(上司)はあまり積極的には関与してこなかったのではないでしょうか。
現状、私が感じる懸念点は以下の2つがあります。
1)担当者が法令の内容を理解できずに説明ができない
制度の周知については、恐らく大部分の会社が厚生労働省のパンフレットを書面やPDFで案内する、といった対応に落ち着きそうですが、対象者から質問などをされても回答できないことが予想されます。
そういったことが不信感につながり、トラブルのきっかけになることもあります。担当者はある程度は法令を理解し、わからないことは専門家を頼った方が良いでしょう。
→この辺りは弊社の顧問先の皆様は、社員さんからでた質問を弊社へご連絡頂ければ回答致します。顧問社労士がいるメリットかと思います。
2)マタハラのリスクが上がる
一番懸念するのがこのマタハラのリスクです。
今回、男性からも、申し出があった場合は育児休業の取得について意向確認をする必要があります。この意向確認の際、例えば個別面談において、上司から育児休業の取得を暗に控えさせるような圧迫面接的な態度で説明や意向確認が行われてしまうと、ハラスメントにもなりかねません。
男性の育児休業については、確実に世代間のギャップというものは少なからずありますので、マネージャーは特に今の時代背景や社会情勢、法令の内容を理解したうえで法令違反やハラスメントにならないような対応が求められます。
既に以前に比べて増えてきてはいますが、なんだか、ハラスメントの研修依頼が増えそうな予感がします。
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