定年再雇用の労務トラブル:長澤運輸事件について
- 2018年6月25日 月曜日

こんにちは。社労士の志戸岡です。
先日、30/6/1に以前から注目していた「長澤運輸事件」と呼ばれる最高裁の判決がでました。
今日はこの判例を紹介したいと思います。
<概要>
・定年退職後に、正社員の時より賃金を減額し嘱託社員として再雇用された。
・嘱託社員になっても正社員と同じ職務内容と勤務形態だった。
・同じ仕事してるんだから正社員と同じ待遇にしてよ!と嘱託社員が訴えてきた。
ざっくりと言うと、このような内容の労務トラブルです。
嘱託社員側の請求根拠は?
嘱託社員側の請求する根拠は、労働契約法20条にあります。
この条文の趣旨は、正社員と期間の定めのある契約社員で契約期間の定めがあることによって労働条件に差がある場合、不合理なものはダメですよ、というものです。
今回の判決の結果
さて、結果ですが、結論としては会社の勝訴とも言える内容でした。
最高裁の難解な判決文を読んでみると、次の3点が会社にとって有利に考慮されています。
1)定年再雇用の人は年金が徐々にもらえることを考えると、給与多少下がっても、ある程度は仕方のないこと。
2)再雇用者の労働条件を労働組合との交渉の経緯で何度か良くしてきた過去があること。
3)正社員用と嘱託社員用の就業規則がきちんとわけて作られており、なおかつ運用もできていること。
もう少し詳しくみてきます。
今回のトラブルのような同一労働同一賃金の待遇差を争う場合、0か100かで決着がつくわけではなく、支給される項目ごとに判断が下されます。
今回の判決では以下となりました。
●待遇差があっても不合理とはいえない=手当に待遇差があってもいい
基本給、役付手当、住宅手当、家族手当、賞与
●待遇差があるのは不合理→嘱託社員にも手当を出さなければいけない
精勤手当
なお、上記に加え、精勤手当を含めずに計算した残業代の計算方法が間違っているということで、この部分は差戻しとなっています。
そんなわけで、精勤手当だけは嘱託社員にも出してください、という判決になりました。
まとめ
私の感じたポイントです。
●定年再雇用での給与改定は、やっぱり多少は下げても問題なし。減額率は再雇用後の業務内容にもよるので個別調整でしょう。
●就業規則の整備と規定に基づく運用はやっぱり大事。
非正規社員が多い会社では、これからますますそのマネジメントが難しくなってくるのが予想できますね。
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